-第二十九回-
*Azerbaijan_『Mürəbbə』*
「今日は久しぶりに親戚みんな集まったんだ、飲もう飲もう!」
"お父さん、飲みすぎないで下さいね"
「宴じゃ、今日は飲むぞ」
"おじいさんは少しだけにして下さいね"
「まぁ今日くらいいぃじゃないかユミコ」
"お兄さん、調子乗るからそんな事言ったらダメですよ"
「まぁまぁ、ほれユミコさんも飲みなさい」
"ぁ、ありがとうございます"
「何か肴は無ぇのか」
"あ、ムレベ沢山作ったから好きなだけ食べて良いわよ"
「部屋でゲームしてくる」
"トシヒコ、せっかくおじさん来てくれてるんだら、あなたも一緒に飲みなさい。"
「いいんですよユミコさん。そういう年頃なんでしょう、それに引き換えリョウ君はよく飲みますねぇ」
"えぇ昔っから好きなんです、紅茶"
:
今回はアゼルバイジャンの紅茶とムレベの世界をご案内
アゼルバイジャン滞在中に10軒以上のご家庭に招かれました
その度に出てくる紅茶とジャムのセット
朝昼晩、食前食後に紅茶セット
市場で呼び止められておばちゃ んと紅茶
若者の集まりでさえお酒を飲まずにまず紅茶
隙あらば紅茶が出てきます
そして、紅茶とセットで出てくるのがムレベ
ムレベとはフルーツを甘く煮たジャムのようなモノ
でも、潰さず原型を保っているのが特徴です
フルーツの豊富なアゼルバイジャンの保存食の一つで
如何なるフルーツでもムレベになります
「ママ、やってる?」
"もう今日はお終いです"
「えー一杯だけ頼むよぉ」
" いつもそうやって飲まないと帰らないんだから。ハイ、紅茶"
「あぁ~五臓六腑に染み渡るよママァ」
アゼルバイジャンでは濃く濃く入れた紅茶をティーポットに常備している
飲むときはそれを少量コップに注ぎ入れお湯で薄めて飲みます
ムレベがあれば砂糖無しで、無ければ砂糖を入れます
角砂糖をかじりながら飲む人も多いです
"chay khana"(チャイハナ)と呼ばれる伝統的な茶室へ行きお茶を飲む事もできます
かつてチャイハナは男性の為の集会所で、仲間で集まっては
バックギャモンというテーブルゲームをしたり、新聞を読んだり、仲間と話したりしています
もちろん紅茶と共に。
高級店へ行けば"samavar"(サマヴァル)という専用のポットで紅茶を楽しみます
写真のように中が空洞になっていて、この中で火をおこして紅茶を保温させます
『紅茶を呑んでもお姉さんに呑まれるな』
「あらケイ君、こんにちは」
"こんにちはアゼル美のお姉さん"
「紅茶でも飲んでく?」
"あ、でも"
「いいのいいの、遠慮しないでお上がり」
:
「ちょっと紅茶飲んだらほてってき ちゃったわ。後ろのファスナー下ろしてくれない?」
最後に
今回こっそり写真に写っていたムレベのご紹介(写真上から)
*さくらんぼ
*黄桃
*ブルーベリー
*アプリコット(種まで食べれる)
*桑の実(マルベリー)←シルクの木
*スイカの白い部分
*ホワイトチェリー
*ペイホワ(上の3つ並んでるフルーツの右側)
*緑の若いクルミ
以上。なんでもムレベになるでしょ
:
「ほれユミコさん起きんしゃい」
"あらやだアタシ...飲み過ぎちゃったみたい...紅茶。"